もしもまだ、この声が誰かに届いているのなら

 歴代のMS−07系列機のパイロット様
 ランバ=ラル、トーマス=クルツ、ヴィッシュ=ドナヒュー、ノリス=パッカード、その他名も無き公国軍パイロットの方々。
 あなた方の愛機は二十年以上の時を越え、こんなにも変化してしまいました。

 純白に白百合のエンブレムのつけられたグフカスタムなんか考え出した人間の台詞じゃございませんが、栄光あるザクに続いてグフまでもが、UCファンの心の奥底に暗い影を落とそうとしています。
 次はドムか? ゲルググか? 不意を突いてギャンか?
 ジオン機ファンには苦しい日々が続きますが、皆様は如何お過ごしでしょうか。


 ガンダムのみならず、マクロスなど長く続いたシリーズには「遊び」の介在する余地がある。例えばZにおけるシャア(クワトロ)、アムロ、ブライト、フラウそしてハヤト。これら「前作キャラの数年後の姿」というのは、前作ファンをひきつけるための大事な要素だ。これらはZZや逆襲のシャアなどでも受け継がれているが、不思議な事にそれ以降はほとんど使われていない。逆に公式作品が「0083」や「08小隊」といった「歴史の隙間を埋める」方向へ転換してからは、重要なエッセンスとしてしばしば使われている「アムロ専用Zプラス」などがいい例だろう。

 未練がましくて申し訳ないが、拙作「promise」がガンダムエース小説大賞で大賞を逃がしたのは「一年戦争の有名キャラクターを登場させなかったから」だと思っている。初めてガンダムに触れる人への配慮として極力既存のキャラクターを出すまいと努力したのが完全に裏目に出たと言うわけだ。
 それが効果的に発揮されれば前作に興味を持つ人間も増え、前作のファンも確実についてきてくれる。長期にわたって同じ時間軸を使用し続けているガンダムマクロスにしか使えない、効率的な手段と言えるだろう。

 しかし、どこにでも失敗というのはつきものなわけで、この餌が逆に前作ファンの怒りを買うことがままある。ターンAにおけるカプルボルジャーノンにおいてもその兆候は見られたが、こちらは物語そのものがかなり上手に纏められている上、デザインを思い切ってほとんど変更しないという荒技に出たため表立った反発は少なかった。ちなみに自分的にはボルジャーノンカプルも「アリ」だと思っている。
 今回の種デスにおけるデュランダル議長&タリア艦長の声優に、池田氏(シャア役)と小山氏(キシリア役)を起用したのは、果たして旧ガンダムファンの食いつきを狙ったものでないと言えるだろうか(放送開始直前には古谷徹氏(アムロ)へオファーが来たという噂があった。真偽は定かでないが)。ちなみに個人的な意見だが、タリア艦長ははっきり言って合っていない。まあ女性軍人を書きなれた身としては、タリアのキャラ立てがマリューのそれと同じに見えて仕方が無い。別の軍なら、もっと違う描写をして欲しいものだと切に思うのだが。
 メカにおいても失敗は続く。ザク登場の第一報が流れた時にはそのギラ=ドーガともマラサイともつかぬデザインとケバケバしい原色カラーリングに涙を流したジオンファンも多かろう。ゲイリー(0083)に成り代わってドム=トローペンのヒートサーベルで真っ二つにしてやりたいと願ったのは僕だけではあるまい。
「ザクか!? 種に下ったのか!? その姿は忍びんッ!!」
 そして今回のグフ。そしてTM西川氏の再起用。自分は決して西川氏が嫌いというわけではありませんが(むしろ好きなほうか)、今回の再起用はどう考えてもミゲルファンとTMファンを釣るための餌にしか見えない。何しろバスターのプラモデルが売り上げ不調だという理由でディアッカの寝返りを決めた御仁のすることだ。きっと長生きするだろう。
 自分にとってのザクはあくまでMS−06(05)系列だけだし、グフはあくまでMS−07系列だけ。そう心に誓って結びとしよう。

 キラール殿:現在執筆作業がやや遅延しておりますが、リファインは最初のクライシスに向けて1歩1歩着実に進んでおります。こういうクライシスは足場をしっかりと組み立てないと読者がついていけないので、慎重に慎重を重ねておりまする。ご期待あれ。